生物?環境
2023、2024年の高温による春の展葉の早期化を衛星データで確認

JAXAの気候変動観測衛星「しきさい」の観測データを用いて、近年の日本における展葉(植物の葉の展開)日を推定したところ、春の高温が顕著だった2023、2024年の展葉が例年よりも早まっていました。このことは、気候変動による高温が、日本の生態系に影響を及ぼしていることを示唆しています。
温暖化によって春の開花や展葉(植物の葉の展開)が早まる現象は定量的に予測されていましたが、本研究では、2023、2024年に生じた顕著な高温下において、予測と矛盾しない展葉の早期化が生じていることを、衛星の観測データ分析により明らかにしました。
JAXAの気候変動観測衛星「しきさい」の観測データを用いて、2018?2024年の日本の展葉日を推定した結果、2023年の関東?中部地方、2024年の北陸?東北?北海道地方で、展葉日が例年より3~7日早かったことが分かりました。特に世界自然遺産の白神山地周辺では、例年より9日ほど早かったことが推定されました。また、展葉日の早期化は、春の気温が高い年ほど顕著であり、温暖化などの高温が広範囲の生態系に影響を及ぼしていることが示唆されました。
さらに、展葉日と気温の関係について、春の気温が1℃上昇すると展葉日が約4.4日早くなる傾向が認められました。この傾向は、気候変動の将来予測シナリオに当てはめると、RCP2.6(最も気温上昇の低い場合)では約7日、RCP8.5(最も気温上昇が高くなる場合)で約21日の早期化に対応します。展葉日の早期化は生態系への悪影響につながるため、こうした顕著な高温下における生態系の反応を理解することは、将来の気候変動に伴う生態系への影響を定量化する上で非常に重要です。今後も異常気象は増加すると考えられ、継続的な衛星観測を通じた生態系監視や実地観測サイトの拡充が求められます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
中国福利彩票,中国福彩官网 生命環境系奈佐原(西田) 顕郎 准教授
水野 優輝 環境科学学位プログラム(博士前期課程)2年次
掲載論文
- 【題名】
-
Impact of high temperature in 2023 and 2024 on spring leaf flush phenology in Japan derived by GCOM-C satellite.
(GCOM-C衛星を用いた2023年?2024年の高温が春の展葉フェノロジーに与えた影響の観測) - 【掲載誌】
- Scientific Reports
- 【DOI】
- 10.1038/s41598-025-94623-9
関連リンク
生命環境系環境科学学位プログラム
PREVIOUS
生物?環境
「南岸低気圧」の活動が春に活発になるメカニズムを解明